今、9月3日、夜10時に、この原稿を書いています。つい先ほどまで、男の僕でも恐怖を感じる位の集中ゲリラ雷雨が僕の住む街を襲いました。
今日は、この原稿の締め切り、と自分で決めたのはいいものの、中々書き進めることができずにいましたが、気分が乗らない上に物凄い雷の閃光と爆音、激しい雨音に怯えて、なおさら書く気を失くしておりました。
しかもどういう仕組みか、スマホから不気味な音が断続的に鳴り始め、「ヤバいから早く逃げろ」といった内容の避難勧告が発令されるという始末。コワいよー、という事態。エッセイを書くなんてとんでもない。
それに、避難しろって言われてもこの豪雨と雷の絶え間ない大音響と閃光の中、どうやって外に出て、そもそもどこに避難すればいいんじゃ?かえって危険じゃないかというカンジで、なんだか投げやり気味になり、もう原稿も、避難勧告もドーデもイイわいと開き直ってお酒を飲み始めた矢先、電話が鳴りました。
「アンタ、大丈夫ねー!」と九州の叔母からの電話。「アンタの住んでる街が豪雨で大変なコトになっとるって今ニュースでやっとるけん!」と。
僕は、何か考え事をする時、絶対にテレビをつけないので知りませんでしたが、スイッチを入れてみたところ、なるほど、地元の見慣れた場所が浸水していたり倒木で道がふさがっているシーンがニュース番組で実況中継されているではありませんか。
それを見て心配して電話をくれた九州の叔母の周辺も、昨今、地震やら水害で何かと大被害にあっていることもあり、心配してくれたのでしょう。
その叔母は毎年2回、明太子を3キロ、ですから年に6キロという大量の明太子を一人暮らしの僕に送ってくれるという奇特な人でして、時々夜、電話で長話をするといった関係です。僕は父方、母方を合わせると結構な親戚親類がおりますが、全く音信不通で、ただその叔母だけは30年くらい会っていないのに仲良しです。
先ほど明太子を年間6キロと書きましたが目の当たりにすると想像以上に大量です。いかに本場とはいえ、その量だとかなりなお値段になっていると思うのですが、何年も毎年送ってくれています。おかげで明太子を自分で買うということをしたこと無いのですが、時々スーパーなどで見てみると魚卵類って高いのね。居酒屋さんのメニューにも時々明太子ってあるけど、ほんのちょっぴりで割と高いし、あんまり美味しくなかったりで、ま、僕はわざわざ外で食べる必要ないしね。贅沢なことです。
さて、北九州は明太子の本場、だから送ってあげる、というのはすごく説得力がありますね。で、僕は考えてしまうんです、お返しに何を送ってあげようかなぁ、って。
横浜ならではの、もらってうれしい名物ってなんだろう。ぱっと思いつくのはやっぱりシウマイなんですが、九州でも簡単に手に入るし、中華街の中華饅頭だの月餅なんかを送っても何だかなぁって感じだし、横浜銘菓なんてのもどんなもんだろか、と思ってしまうしで(あ、これは僕が甘いものにキョーミがないからですね、きっと)、一周回って、やっぱりシウマイ送っちゃったりね。横浜で生まれ育ちましたけど、逆に横浜ならではの絶対的に説得力のある美味しいモノってなんだかよく分からなくなっています。これこそが横浜の美味!これを送ってあげなさい!というものがあれば、誰かアドバイスください。
また今回も、集中ゲリラ雷雨↓九州の叔母からの電話↓明太子↓横浜名物ってなんだろ、といったしょうもない流れになりました。
ホントは駅の立ち食いそば屋さんの「コロッケそば」について書こうかなって思ってたのにな、おかしいなぁ。
エッセイスト 北園 修
Photo:藤間 久子『Slowly』