2021.02
「変化」を「チャンス」ととらえて、新たに「明日をつかむための進化」を目指します。
公益財団法人 横浜市スポーツ協会 会長
山口 宏 氏
Profile
昭和34年、横浜生まれ。巨人軍の長嶋茂雄選手にあこがれ、また祖父久像氏(横浜スタジアム初代社長)の影響もあり、小学4年生から野球を始める。東海大相模高校時代は、野球部の主将。チームは強打で鳴らし、原辰徳選手(現巨人軍監督)らとともに、春夏合わせ計4回の甲子園大会出場を果たす。卒業後は立教大学へ進むが、ケガで野球を断念。野球への情熱は変わらず、現在も社会人野球チーム「横浜金港クラブ」の部長のほか、横浜野球協会会長、横浜野球連盟会長など様々な役職をつとめ、地域スポーツ界をサポートする。平成22年、横浜市体育協会の第8代会長に就任。電気工事やビル管理を行う(株)共栄社の社長。趣味は映画観賞。
横浜市スポーツ協会のご紹介からお願いします。どのような目的を持ち、どのような活動をされているのでしょうか。
公益財団法人横浜市スポーツ協会は、1929年にその前身である「横浜体育協会」として設立され、以来90年にわたって横浜市のスポーツ振興と横浜市民の健康づくりに貢献することを目的に活動を行ってきました。「いつまでもスポーツが楽しめる明るく豊かな社会の実現」を協会の理念として、横浜市や加盟団体の皆さま、関係者の皆さまの尽力によって、事業の裾野を広げてきた歴史があります。スポーツへの関わり方は目的や年齢によって変わってくるものです。当協会ではそうした環境の変化に対応し、現在はより多くの方に機会と場を提供できるように、「競技スポーツ」「生涯スポーツ」「地域スポーツ」「インクルーシブスポーツ」「健康体力づくり」など幅広いステージを用意し、スポーツ推進を図っています。
山口会長はいつごろから協会の運営に携わってきたのですか。
私は2000年に理事に就任し、2006年に副会長、そして2010年から会長を務めさせていただいています。元はといえば、私の祖父である山口久像(横浜スタジアム初代社長)がアマチュア野球関係の団体役員を長く務めていました。1988年にその祖父が亡くなった後、私も小学校からずっと野球をやっていましたから、自分も野球を通して地域に貢献したいという思いがあり、色々とお引き受けしてきました。気がつけば横浜野球協会、神奈川県野球連盟等の会長も務めている(笑)次第ですが、スポーツと縁をいただいてきた流れで当協会からもお声がけをいただきました。
横浜市スポーツ協会のみならず多くの体育団体の要職を務め、スポーツ普及、振興、発展に貢献されてきた実績が、横浜市の最高顕彰である今年度の「横浜文化賞」の受賞へとつながりました。
受賞の報せをいただいたとき、まずは信じられず、しばらくしてじわじわと喜びを感じ身に余る光栄だと思いました。スポーツ振興の分野でいただいたのですが、過去の受賞者は当協会の藤木前々会長須藤前会長、横浜高校野球部の元監督である渡辺さんなど錚々たる顔ぶれで大変恐縮しました。昨年の11月に横浜みなとみらいの小ホールで式典がありまして、今回はコロナ禍において規模縮小で行われたのですが、受賞者の一分間スピーチは大変緊張しましたね(笑)。実は私の祖父も1976年に受賞しているのですが、自分としてはスポーツ振興の現場で多くの方が汗を流し、尽力されていることに感謝し、皆さんを代表していただく気持ちをもって、今後の活動への励みにしたいと思っています。
コロナ禍という話しが出ましたが、スポーツ界での影響は現在どのような状況ですか。
私は全日本軟式野球連盟の運営にも加わっているのですが、軟式野球では毎年大きな大会が10以上開かれますが、昨年実施されたのは11月に岡山で一つだけでした。横浜市では秋口から少年野球が予防対策を徹底しながら各区の区民大会が順次開催されていきました。春はすべての試合、大会が中止になりましたから秋になんとか市大会、県大会も開催することができて少し安堵しました。ただし大変なのは屋内スポーツで、体育館の使用などにおいても人数制限があったりしますので、競技スポーツ団体は大会を開催できない状況にありますね。卓球は一部再開の動きが見られますが、剣道や柔道など接触が多い競技は残念ですが現時点では大会開催の見通しが不透明です。
今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。協会としての関わりはどのようなものですか。
横浜スタジアムが野球、ソフトボールの試合会場になっており、運営は組織委員会のほうなので当協会としては直接関わりはありませんが、横浜市とともに気運醸成イベントなどを行っています。また、当協会はサッカーの試合会場になっている日産スタジアムの指定管理者であることから、安全安心な競技開催に向けて万全の準備をしていきたいと思っています。またオリンピックに先駆けて世界トライアスロンシリーズ横浜大会が5月に開催されますが、こちらは密を回避しながら開催する準備の真っ只中です。10月には横浜マラソンも控えているわけですが、コロナ禍がどのように収束するか見えていない状況が長引けば、スポーツ大会開催の「基準」というものを明確にしていく必要があります。新しい取り組みとしては、トライアスロンもマラソンもオンライン大会を昨年開催しましたが、参加者にも好評で、すでにかなり普及しています。
コロナ禍において、あるいは「ウイズコロナ」において、スポーツをするというのは今まで通りにいかない面も出てきますね。
感染予防しても不安がある、という方も多いと思うのでオンラインやバーチャルを活用して体を動かすといった、やり方に工夫が必要になってきます。しかし一方で、コロナ禍において体を動かすことが体力や精神面において大きな影響を及ぼすという、スポーツの価値が改めて確認されたと思います。プロのアスリートをはじめ市民にとっても、むずかしい状況でもスポーツができる喜びを味わってほしいですね。
この3月に、3年間にわたる第4期中期計画を終えますが、振り返っていかがですか。
第4期中期計画では、テーマを「チャレンジ&チェンジ」として、ラグビーワールドカップ2019の大会成功に向けた機運の醸成、当協会として初めてのPFI事業である横浜武道館の運営、財務体質改善などに取り組んできました。目標達成した部分もありますが、やはり今年度のコロナ禍の影響は少なくありません。当協会の財政面は、先ほども申し上げた日産スタジアムを始め市内30か所以上で指定業者指定管理者となっている施設運営によるものです。そのなかで3月から5月まで全施設が閉鎖となり、現在もフル回転とはほど遠い状況にあります。厳しい状況ですが、「変化」を「チャンス」と捉えて、次に向かっていきたいと思っています。
これからの協会活動における抱負などお願いします。
この4月からスタートする第5期中期計画では「明日をつかむための進化」というテーマを掲げました。さまざまな環境変化において、協会としても進化して、持続可能な組織になることが必要です。「いつまでもスポーツが楽しめる明るく豊かな社会の実現」という理念にもとづき、市民ニーズを捉えた収益力強化、各施設のスポーツ教室をはじめとする自主事業の活性化、プラスSDGsへの取り組みも必要不可欠だと思います。スポーツを通して、市民の皆さまが元気になっていくような活動に、職員一丸で取り組んでいきたいと思います。
株式会社共栄社にて(12月3日取材)
インタビュアー広報委員 福井